薫ちゃんがあたしのせいで怪我を負ってしまった。それもこれもあたしが犯人の催眠にやられてしまったせい。それで薫ちゃんはあたしをかばって怪我を負ってしまった。
その日は葵ちゃんは里帰りで、紫穂ちゃんは家の用事で、チルドレンが薫ちゃんしか居なかったので、あたしが臨時で薫ちゃんと一緒に行くことになったのが始まり。
あたしは薫ちゃんより力が強くないから足手まといになるのは正直あたしには見えていた。薫ちゃんの足手まといになる、つまりそれはどちらかが任務に失敗しちゃうかもしれない。それがわかっていたから。
そしてそれは現実となってしまったのだけれども。(ちゃん!!!)(だめだよ!かおるちゃ・・・)ああ、ホント思い出しただけで自分の頼りなさと、嫌悪感でいっぱい。あたしがその場に居なければスムーズに事は進んでいたはずなのに。

そのあとみんな(特に薫ちゃん)はあたしに大丈夫だから、と言ってくれたけど・・・葵ちゃんも、紫穂ちゃんにも、あたしどんどん迷惑かけてる・・・皆本さんにも。ホントあたしはお仕事するだけでいろんな人に迷惑かけてるだろうな・・・よく局長はあたしをクビにしないなあ・・・あれかな、アイツと関わりがあるからかな。あ、それだろうな。監視下に置いておかないと危険なんだろうな。
桐壺局長のことはすごくすき。あたしを拾ってくれたひとだから。すっごい甘やかして育ててくれたと思うんだ。きっとそれが今になって恩を仇で返すようなことになって悔しい。

落ち込んでるときって周りが本当に敵に見える。特に今日はラスボスがどうやら天気なようだった。学校の帰りだというのに、まぶしい位だったはずの快晴が傘もないというのに、大雨に変わった。本当についてない。濡れ鼠なんてなんて今のあたしに似合うんだろう。
世間から白い目で見られる。エスパーって言うだけでも散々遠巻きに陰口言われて、何もできないから疎まれて。

大雨すぎて目の前がちょっと白くなってる。雨宿りもしたくないし、今日は近道して公園を通って家に帰ろうと思った。前向いて歩く自信がなくて公園を下を向いて歩いていると、ふと雨が止んだ。でも外は雨が降ってる。どういうこと。後ろを振り返ると見たことのある銀色の髪の毛。嘘でしょ。
「なんで・・・」「随分弱ってるね。」「馬鹿にしに来たなら生憎だけど・・・」そんなことしに来たんじゃないよ、と途中でさえぎられた。そいつはあたしの目の前まで来て、あのときみたいなさみしそうな笑顔を見せた。「同情したいの?」というとまさか、とあたしから視線をはずした。なんだっていうんだ本当に。でも、なぜか京介に逢えてうれしい自分が居る。
京介の超能力によってあたしの周りを降ろうとがんばってる雨はあたしに当たることもなく流れていく。それを見てたら何もできない自分に見えた。きっと薫ちゃんたちならこの雨とは違ってきっと京介の中にも入っていけるんだろうな。
「・・・あたしなんて、要らない子なんだよね。」まっすぐに流れる事のできない雨を見つめながらあたしはそう呟いた。「あたしさ、ホントに必要なのかな。」「この間も薫ちゃんの足引っ張っただけだし・・・」「あたしなんて、京介と接触しちゃいけないから、保護下に居るんじゃないのかな。」て、一緒に今居るけど、と力なく笑う。でも顔を京介に向けられない。こっち見るなとか、言われたらどうしようってどうしようもない被害妄想に駆られる。「・・・はそういう風に思ってたんだ?」ピリピリした口調に怖くなって彼の方をちらりと見ると眉間に皺。怒らせてしまった。「・・・そんなこと、思ってないもん。」「みんなと居たいけど、邪魔になっちゃうんだもん」人前で泣くなんて久しぶりだったから、なんだか押さえが利かなくて、雨は降ってないはずなのにどんどんさっきまでぬれていた服にまた斑点ができる。止まらない。すると京介はあたしの腕を引っ張って抱きしめてくれた。「・・・や、だ、優しくなんか、しないで、よ。」止まらない涙に、止まらない嗚咽。なのに京介は腕の力をゆるめてなんてくれなかった。むしろ強くなった。それゆえか、少し、腕が震えていた。

「・・・僕ならもう絶対を悲しませないよ。」いつもみたいな余裕のある声じゃなくて、ちょっとつまった声にあたしは本当に驚いた。一緒に居たころもいつも余裕がある、時々大人げなくて、そんな京介しか知らなかった。きょうすけ・・・かすれた声で彼の名前を呼べば、さらにきつくなる腕。「僕のところに、来ないかい?」「絶対に、を悲しませたりなんかしない。」・・・京介はずるい。「・・・駄目だよ。」あたしがぽつりと呟くと京介のえ、と言う声とともに腕にこもっていた力が緩んだ。「これ以上みんなに迷惑かけれない・・・」それに、「京介にいつまでもあたしは頼ってちゃ駄目なんだよ。」だって京介は桐壺局長の、みんなの、敵だから。そんなことこれっぽちも思ってないのにそう言って彼をあたしは突き飛ばす。自分勝手なエゴのせいで。傷ついているのはあたしじゃなくて、周りの方。あたしが傷つけている。京介に聞こえるか聞こえないかの声でごめんね、と言って、彼の腕をすり抜けた。

グレーエゴイズムグッバイ

京介の優しさに漬け込もうとしたあたしは本当に嫌な奴だ。
できるならまた一緒に居たい、なんて言えない。常に黒と白に挟まれる灰色な気持ち。銀色と見分けがぱっと見つかないのに高貴ではない灰色は、まさにあたしにお似合いだ。










(皆本も助けてくれるそうです→)