薫ちゃんがあたしのせいで怪我を負ってしまった。それもこれもあたしが犯人の催眠にやられてしまったせい。それで薫ちゃんはあたしをかばって怪我を負ってしまった。
その日は葵ちゃんは里帰りで、紫穂ちゃんは家の用事で、チルドレンが薫ちゃんしか居なかったので、あたしが臨時で薫ちゃんと一緒に行くことになったのが始まり。
あたしは薫ちゃんより力が強くないから足手まといになるのは正直あたしには見えていた。薫ちゃんの足手まといになる、つまりそれはどちらかが任務に失敗しちゃうかもしれない。それがわかっていたから。
そしてそれは現実となってしまったのだけれども。(ちゃん!!!)(だめだよ!かおるちゃ・・・)ああ、ホント思い出しただけで自分の頼りなさと、嫌悪感でいっぱい。あたしがその場に居なければスムーズに事は進んでいたはずなのに。

そのあとみんな(特に薫ちゃん)はあたしに大丈夫だから、と言ってくれたけど・・・葵ちゃんも、紫穂ちゃんにも、あたしどんどん迷惑かけてる・・・皆本さんにも。ホントあたしはお仕事するだけでいろんな人に迷惑かけてるだろうな・・・よく局長はあたしをクビにしないなあ・・・あれかな、アイツと関わりがあるからかな。あ、それだろうな。監視下に置いておかないと危険なんだろうな。
桐壺局長のことはすごくすき。あたしを拾ってくれたひとだから。すっごい甘やかして育ててくれたと思うんだ。きっとそれが今になって恩を仇で返すようなことになって悔しい。

くん。」ふと後ろを振り返れば、さっきまでの自己嫌悪の原因のひとりでもあった皆本さんが居た。なんか今の言い方だと悪い人みたいに聞こえるけど、実際悪いのはもちろんあたしだ。
あたしは随分げっそりしてるようで、皆本さんは振り返ったあたしを見て驚いていた。ああ、そういえば此処数日間全然寝てない。・・・多分、薫ちゃんの怪我の日から。すごい形相で皆本さんはあたしの肩を掴んで「くん、その顔はどうしたんだい!?」と言ってきた。相変わらず面白い人だなあ。あわあわしている皆本さんを見ているとなぜかさっきまでの自分のくよくよ加減が笑えて来た。笑ってるあたしに顔を赤らめて否定してくる皆本さんはいつもの皆本さんだった。だけどその反面その皆本さんも表面上だけだったらどうしよう、という不安がよぎった。そういうの苦手な人だってわかってても怖いものは怖い。さっきまで笑っていたあたしが急に黙り込んだからか、皆本さんは不思議そうにあたしを見た。「どうしたんだい?」といきなり顔を覗き込まれてびっくりして、ひゃ、というなんとも乙女らしい声を出して一歩下がろうとしたら、後ろにこけかけた。あ、スローモーション。

地面と衝突を免れないと思ったら地面とは反対側からの力によって衝突を免れた。「くん!」と言う声と共に腕を思いっきり引っ張られて気づいたら皆本さんに抱きしめられてるみたいになった・・・は、恥ずかしい。あわてて皆本さんはあたしに謝りながら掴んでいた手を離した。・・・キョリを感じてしまった。皆本さんの謝罪に、力なく答えたあたしにやっぱり不思議に思ったようで、「今日は随分と元気がないんだね」と悲しそうな笑顔を見せてあたしに尋ねた。「・・・どうして皆本さんが悲しそうにするんですか?」「え、そんな顔してたかい?」ええ、とっても悲しそうな笑顔です、と素直に言うと皆本さんは参ったなあと頭を掻いた。なにがまずいんだろう。「どうも人を元気付けることって苦手で・・・どうしたらくんがいつも見たいに笑ってくれるかな、と思って・・・」薫のこと、まだ気にしてると思うし、とバツが悪そうに視線をはずした。ああ、この人なら、いや、この人たちになら、こころを開けることができるのかもしれない。本当に素で思った。あの時親に捨てられて、京介にあたしだけ幸せになれと言われて、桐壺局長に拾われて、だけどそれでもあたしは泣かなかった。だけど、漫画みたいに涙がポロって出てきてとまらなくなった。驚いた皆本さんはあわててどうしたんだい!?と言ってくれたけど、言葉がうまく出ないから携帯を出して「ごめんなさい、うれしかったから。」と打つと皆本さんはあたしが泣き止むまで頭をぽんぽんと規則的に叩いてくれた。

ノンコントロオルティア

みなもとさん、ありがとう。涙が止まって目を赤くしたまま微笑んだ彼女になんとも胸が高鳴った。






(見つかっちまった\(^3^)/←)(皆本VS京介になるかもしれないYO)