さぷりめんと//つめこみ

バベルの自動ドアを通り、帰路につこうとすると建物に凭れて誰かを待っている女。ボクを見つけてこっちに向かってきた。
「何?また来たわけ?」ボクはコイツが嫌いだ。
「ご、ごめんね…」オドオドとした性格も、目をあわせずに話すところも、
「兄貴の姉だからって何様のつもりなわけ?」カオル兄貴の姉であることも。
「ご、ごめん…でもね、」両手で掴んだ手提げをぎゅっと握ってボクと目をあわせる。
舌打ちをしたくなる気持ちを堪えて見つめ返すと、
「私の友達がね、ショウくんと付き合ってたみたいなんだけど、フラれたって言ってたの。」 「わたし、ショウくんがモテるのもよくわかるし、今まで超能力のこととかでも色々あっただろうしノーマルのことを信用できないのもわかるんだけど…」
「アンタに何がわかるの?」「え?」「せいぜいレベル2,3のアンタに何がわかんの?」「兄貴の姉だから?兄貴の苦しみがわかる?兄貴とボクの苦しみが一緒だって言いたいの?そういうのだったら迷惑でしかないから。」
ボクの言葉に目を見開いて動けないだろう彼女から目を逸らす。
通り過ぎる際に聞こえた言葉に振り返りそうになった。だからあの女は嫌いなんだ。
じくりと心臓が痛む。アイツに関わるといつもこうだ。
寄ってたかってくる女には適当にあしらえるけれど、アイツにはついムキになって言いすぎたと後悔してしまう。

ショウくんに今度こそ拒絶された。偽善じみた自分のせいだ。
ふい、と目を逸らされると同時に俯いてしまった。じわりと視界がにじむのがわかった。ああ、私またショウくんを怒らせてしまった。
「カオルくんじゃなくて、ショウくんのことをもっと知りたいのに。」
目の前に居た彼はもう居なかった。誰にも聞かれることのない言葉。
同じサイコメトリーで、彼と私で違うのはレベルと視た感情に私はすぐに流されてしまうこと。
普段は絶対に視ることが出来ないショウくんの心を何かの拍子で視てからずっと、ずっと、彼の役に立ちたいと思っているのに。
現実はいつも彼を怒らせてばかりで、私は結局何にも役に立てていなかった。
ショウくんにとっては私もその他大勢でしかないのだろう。特別な感情を抱いているのは私だけ。

(サンノミヤ・ショウ)


「す、スージーちゃん」「いいでしょぉー?女同士なんだしィ?」
いやまあ、そうなんだけど。胸の大きい人に胸触られるのは軽いダメージを受けるっていうか…
「え〜?ちゃんの胸おっきいじゃん?」っていうか柔らかいし!
ぽふんと私の胸に飛びついてきたスージーちゃんを慌てて受け止める。
スージーちゃんのセクハラから逃れることが出来ずに受けていると、しばらくして医務室の扉が音を立てて開いた。

「た、隊長・・・」扉の方を見るとスージーちゃんの新しい隊長である男の人が居て、スージーちゃんはぴたりと動きを止めた。
「えっと、くんだよね?」「は、はい!」「すまないね。」
「い、いいえ!いつものことなので・・・」苦笑いする私の腰からそっと離れたスージーちゃんがの腕がするりと隊長さんの腕にまわっていた。
じゃあね!と振り返って私に手を振るスージーちゃんに手を振り替えして、私は一息をついた。

スージーちゃんは日本に三人しか居ない高レベルエスパーとしてチームを組んでいるが、私はせいぜい状態がいい時でレベル5のエスパーである。
同じ医療チームでも隊長さんと会える機会はほとんどない。
今日は珍しく隊長さんに会えたなあ…。今日はラッキーだ。

私は、緩む頬に力を込めながら、んーと伸びをすると机に向かってカルテの整理をし始めた。

(スージー賢木と隊長)


「あれ、カガリ髪の毛括ったの?」
「…姉」
「そっちのがいいね!男前なのがはっきりわかるし!!」
「ちょ、せっかく括ったのにボサボサになんだろ!」
「じゃあお姉さんが括ってあげよう!」
「・・・」
「おー、カガリ髪の毛さらさらだねぇー、うらやましい。」
「…姉、」
「ン?」
「ありがとう。」
「…かわいいなあ!コノヤロー!」
「うわ、ちょ、抱きつくなよ!!」


「なんだよカガリお前泳げねえのかよ!俺が特訓してやるよ!!」
「え、ちょ、葉兄…!」
「あ、ちょっと葉っぱ!カガリは…!」
どぼーん
「馬っ鹿!カガリはパイロキネシストだから水に浸かったら動けないんだよクソ葉っぱ!!」
ざばーん
姉…助かった…」
「私はカガリと反対の水を扱う合成能力者だからねえ…大丈夫?」
「な、なんとか…」
「お前は沈んでろ葉っぱ。」
「うえ、ちょ、」
ばっしゃーん


「ねえ、女の子とキスしたことある?」
「な・・・!」
「えー?なになに?恋バナ!?」
姉!」
「何?やっぱりカズラはカガリが好きだっ…」
「…何か言った?」
「くるし、い…カズラ…く、首はやめて…」
「お、おいカズラ!姉の顔色が…」
「や、やりすぎた!ごめん!姉!!しっかりしてぇー!」
「ふえぇ…カガリごめんね…支えてもらっちゃって…」
「(姉の胸が、当たって、る)」
「(…カガリ、顔に出てるわよ…」)
「カズラの能力、前より随分安定したねぇ〜…おねえちゃん嬉しいわァ…」
姉…!わ、私これからもがんばるね!」
「(くそっ…カズラだけかよ…しかもドサクサになって抱きつきやがって…)」
「(ふふん、カガリが姉のこと好きなの知ってるけど、私だって姉のことが好きなんだからね!)」

「…って女王が呟いてたらクラスの雰囲気がおかしくなっちゃって…」
「罪作りすぎる!!」
「薫ちゃんかわいいもんねー?で、カガリはどうなの?」
「(姉…カガリに聞くのは可哀想だよ…とは言えない…)」

(カガリとカズラ)