目が覚めたのは携帯に着信を告げる音が鳴ったから。天井をしらばくぼーっと見ていると途切れたはずの着信がもう一度鳴り響いた。携帯に手を伸ばすと薫ちゃんの声が聞こえた。「ちゃん、支度できた?」という薫ちゃんの声の後ろで葵ちゃんや紫穂ちゃんの声も聞こえる。みんな元気だなあ、と思っていると携帯をとりあげられたのか、次は皆本さんの声がした。「朝からうるさくてすまないね。」「いえいえ、みんな元気そうでなによりです。」「さっき薫が言ったとおりなんだけども、もう準備はいいかい?」はい、いつでもいいですよ。と言うとじゃあマンションの前についたらまた連絡すると言われて会話は切れた。
ふう、と一息つくと、昨日のことがふと頭をよぎった。なんか・・・ゆめみたいな一日だったよな。もう逢えないと思っていたひとたちとたくさんおしゃべりして、クリスマスイヴと一緒に過ごしていたなんて思えない。
「でも、それのおかげでみんなの予定つぶしちゃったんだよなあ・・・」はあ。
しばらくしてまた電話が鳴った。着信は誰かわかっていたので画面なんて見ずにあけた。機械の向こうある皆本さんの着いたよという声が耳の鼓膜を刺激した。わかりました、と言って電話を切り部屋を出た。(わ、忘れ物ないよね?)クリスマスプレゼントもちゃんと持ったし。

マンションの自動ドアをくぐるとそこには薫ちゃんたちチルドレンと、皆本さんが居た。薫ちゃんが大きく手を振ってこっちこっちと呼んでくれて、薫ちゃんたちのほうへと小走りで向かった。「遅くなってごめんね?」「全然待ってないから大丈夫やで。」と葵ちゃんがウインクしながら言ってくれた。ウインクできるって羨ましいなあ。なんて思っていると薫ちゃんに腕を引っ張られてよろめきかけたけれどもなんとか薫ちゃんのペースに合わせて走った。相当楽しみなんだろうなあ・・・(昨日も澪たちすっごくうれしそうだったし)子供ってかわいいな・・・「あ、ちゃんあたしたちを子供扱いした。」「んな!?」つないでいた手から紫穂ちゃんに読み取られてしまった・・・!「ちゃんも子供扱いすんのかよ。」と薫ちゃんはこっちを向いてすこし頬を膨らませていたけども、「ごめんね、ほら、ちょっと羨ましくて。」「ほら、子供の特権っていうか。高校生になったらそんなに騒げなくなるからさ、」と言うと薫ちゃんが「高校生って中途半端でどうしようもないってこと?」と聞いてきた。(そこまで言ってないけど・・・)あながち間違えでもないのでそうだね、とごまかして言った。
・・・本当に、いつからだろう。あんな風にはしゃがなくなったのは。とはいえ幼いころのあたしの楽しかった思い出なんて京介と居たあの短い間の記憶しかないわけで。それもそこまで幼いわけでもなくて。はしゃぎ方なんてあたしは実は知らないのかも知らない。

バベルの一室を借り切って局長をはじめ見知った顔ばかりのクリスマスパーティーがはじまった。
最初に局長の一言からはじまったパーティーは堅苦しいものになるのかと思いきややっぱり合コンに近いものに一部はなっていた。賢木せんせは相変わらずだなあ。あとダブルフェイスも。(イベントというイベントを利用してこんなことばっかりしてる気がする)
ちゃん、と名前を呼ばれたので振り返ると其処にはナオミちゃんと谷崎主任が居た。ナオミちゃんたちの方に行くとお互いクリスマスプレゼントの交換をした。「ごめんね、昨日はあたしのせいで・・・」「気にしないで!今こうやってクリスマスパーティーできてるんだし。」とナオミちゃんの谷崎主任命名やまとなでしこスマイルをあたしにくれた。(おおっと、ダメージ大きすぎる)(あたしがナオミちゃんと同じ女という種族だということが嘘みたいなんだけれども。)ナオミからもらったクリスマスプレゼントを見て騒いでいた薫ちゃんがずるい、と駆け寄ってきた。「やだなあ、薫ちゃんにもあるよ。」と言うと葵ちゃんと紫穂ちゃんも来た。「うちらにもあるのん?」「もちろん。」いつもより大きめのかばんから取り出した3人へのクリスマスプレゼントは、それぞれイメージカラーとなっている赤、青、紫のラッピングで可愛くしてもらったもので、色ごとにそれぞれ薫ちゃん、葵ちゃん、紫穂ちゃんに渡した。プレゼントを渡したときにきらきらと目が輝くのをあたしはもちろん見逃さなかった。・・・かわいいな。
昨日あたしが京介からもらったときも、あんな風に嬉しがったのかな、とふと昨日の京介が頭をよぎったけれども、すぐに消えた。すぎたことだし、と自分に言い聞かせただけかもしれないけれども。
ナオミちゃんからと、あたしからのプレゼントでチルドレンたちの両手はいっぱいだった。そして途中からやってきたハウンドの2人が来たので、ナオミちゃんとふたり、またプレゼントを渡した。
みんな喜んでくれてこっちまで嬉しくなるよね、なんてナオミちゃんと言っているとなんの騒ぎかと賢木せんせがあたしたちの集まっているところにきた。「賢木せんせもプレゼントほしいですか?」と冗談交じりにいうと「プレゼントはちゃんでいいよ。」と迫られた。(ちょ、このひと)若干ヒいていると皆本さんがフォローしてくれたおかげでその場はなんとか成り立った。
そしてナオミちゃんと一緒に皆本さん、谷崎主任、賢木せんせにプレゼントをそれぞれ渡した。(谷崎主任にナオミちゃんが渡したときの主任の喜びようはすごかった・・・)そのあと実はこの間プレゼントを渡すリストをナオミちゃんと作ってたときにそういえば局長のがないよ!ってことで局長もリストにあわてていれて23日に一緒に買っていたのです。その局長へのプレゼントも局長に渡した。(そしてすごくよろこんでもらった!)感動のあまり泣いてしまった局長をなだめるのが少し大変だったけれども。





(ひとによろこんでもらえるのがこんなにうれしいなんておもったのひさしぶりだった)