どんがらがっしゃん、とまるで漫画のような大きな音がしてあわてて音がした場所と思われるキッチンに行くと、澪とマッスルがそこに居た。なんで此処にいるのか、とかそんなことより先に、澪は頭をぶつけたのか、頭をおさえながらいたたと言っていたので澪に「頭ぶつけたの?」と聞いた。すると澪はあわてて「ねえ!うわ、いきなりばれちゃった!」なんてのんきなことを言っている。いや、だからそれより頭。とあたしが言えば澪は「あ、たんこぶできただけだから大丈夫!」とマッスルに蹴りを食らわした。マッスルさっきからぴくりともしないと思っていたらどうやら澪のテレポートであたしの家に移動してきて、そこで打ち所が悪くて伸びちゃったようだった。
って、何処に移動してきたんだろう。と澪がマッスルを起こしているのを横目に頭を打ちそうなところを探していると、流し台の下が開いていた。ちょっとまて。本気でそこから入ってきたとしたらマッスルよく無事だったな。
「で、澪たちは今日なんの用があって来たの?(あれ、この台詞昨日も言ったような。)」と澪たちに言うとマッスルが急に起き上がって、「あーん久しぶりィ。」と言ってきた。あ、うん。久しぶり。「あのね、今日はアンタを少佐がお呼びなのよ。」ホントは少佐が直々に来るつもりだったみたいだけど、今女王のところに行ってるみたいでえ、って聞いてる?[女王]という言葉が出てきたあたりから話が右から左にしか聞こえない。
適当に聞こえなかった部分も含めて聞き流して、「悪いけど今日は先約があるから京介に行けないって伝えてもらえる?」と言うと澪が「だ、駄目!今日はねえが居ないと困る・・・!」といつものツン具合なんて微塵も見えない子供らしい表情を見せた。そしてマッスルが「困る、というより今日はアンタの先約をキャンセルさせるために少佐はわざわざ女王に直談判にし行ってるんだから。」と言った。え、先約をキャンセル?「つまり少佐は、アンタとクリスマスをすごしたいのよ。」・・・まただ。また同じ台詞。しかもさっきとは違ってうれしさがこみあげてくる。あら、顔が緩んでるわよ。マッスルにそういわれるまで顔に出てるなんて思わなかった・・・恥ずかしい。

澪とマッスルに連れられてたどり着いたのはパンドラの隠れ家。澪たちに隠れてクリスマスプレゼントを持って行くのは至難の技というものだった。(そういえばあたし京介には何も用意してない・・・)
カガリにカズラ、それにようやく紅葉さんと久しぶりにお話が出来てうれしかった。この間京介と二人で飾りつけをしたツリーもちゃんと其処にあった。着いてすぐ見つけたときはうれしさがまた勝手にこみ上げてきてしまった。
シュン、と空間のゆがみを感じて振り向いた其処には京介が居た。「やあ、。ちゃんと来てくれたみたいだね。」コツコツとローファーの音が近くなると共に京介があたしのすぐ側まで来ていた。「え、あ、うん。あ、そうだ。これ。パンドラのみんなで・・・ってこれだけじゃ少なかったね。」持ってきたプレゼントを澪に渡すと澪を目を輝かせてありがとう!とうれしそうに言った。葉がプレゼントの袋を澪から取り上げて中身を見て、「ありがとう。」と彼独特のへにゃとしたしゃべり方でお礼を言ってくれた。ああ、よかった。よろこんでもらえたみたいで。
横に居る京介にふと視線を向けると京介はあたしを見ていたのか目がばっちり合った。「な、なに?」「で、僕にはないの?」・・・痛いところをついてくるなあ。此処は正直に言おうと口あけると声が出る前に葉が「あっれー、少佐もしかしてからプレゼントもらえないんすかー?」という声が聞こえた。「え、ちょ、葉!?」とあわてて葉の方に向くとすでに京介が制裁を下していた。・・・昔のまんまだなあ。しばらく葉と京介は言い合いをしていたけど、結局葉が京介に負けてしおれて居る。ま、自業自得だよ(と、もちろんあたしが言えるわけがない。)事実京介のプレゼントがないのだから。気がつけば目の前に京介が居て「で、本当にプレゼントないの?」と一歩、また一歩と迫ってきた。(あわわ、どうしよう!)葉のせいで言うタイミング完全に失くした。みんながプレゼントに群がって平和にわいわいしているのを横目にあたしは究極にピンチを迎えている。とうとう壁まで追いやられてしまった・・・もうあたし明日お日様見れないよ。
壁と京介に挟まれて、京介の吐息がすぐ近くに感じるほどの距離は傍から見ればききききキスしてるように見えなくもない距離で。「結局ないんだ?・・・まったく、仕方のない子だね。」そう言うと突然腕を引っ張られて抱きしめられた。(でもこの前みたいにもろい京介じゃなくて、)(余裕持ってる腹黒な京介だった)決して優しく抱きしめられてるわけではない。だけどこの前みたいに心が悲鳴をあげることはなかった。むしろどきどきがとまらない。
京介が耳元でふ、と息をかけるので耳(特に右耳)が弱いあたしはびくりと反応してしまい、それが京介の思うツボへの入り口だったらしく、京介の言葉攻めが始まった。「みみ、よわいの?」「・・・わ、わかってるならやめなさい、よ!」ふふん、と鼻で笑った京介が「やめる?クリスマスに何もくれない君がそんなこと言えるのかい?」といつもの余裕綽々の表情で言った。「じゃあそういう京介は、・・・その、あ、あたしにプレゼント、あるの?」少し自意識過剰に聞こえることを言ってしまったと途中から恥じらいを感じて京介の目を見ていえなくなったけど、抱きしめられていた腕が少し緩んだのでいつもの京介らしくないと思って京介を見ると目を見開いて一時停止していた。しかしすぐにいつもの京介に戻って「あったらなんだい?欲しいのかい?」といわれた(ああ、いつもの鬼畜京介だ。)京介が何かを言おうとしたところで葉が「いい加減にから離れろジジイ!」と京介に言ったのでそこからまた京介と葉の言い合いが始まった。
唖然としていたあたしに紅葉さんは「いつも通りだからは心配しないで。」「それより、プレゼント。ありがとう。」と紅葉さんはサングラス越しに笑っていた。
その後は澪やカガリたちと一緒にクリスマスだと言うことも忘れるぐらいいっぱい遊んだ。久しぶりに逢えたのもだけど、みんなの喜んでくれた顔がうれしくて仕方なかった。・・・京介いがい、だけども。

遊びつかれてちびっこは寝てしまって、ちびっこを寝どころに連れて行ったり、いろいろで気づけばまたツリーがある大広間には京介とあたししか居なかった。「きょうすけ。」「なんだい?」「・・・ごめんね、プレゼント。」なにもなくて。ツリーのしたで三角座りをして、きらきらとひかる電飾を見ていると京介は「別に僕が急に君を呼んだのだからなくて当然なんだけど。」「僕以外にはプレゼント用意してたっていうのは少しイラっとしたかもしれない。」と、あたしが座っている横に腰を下ろした。「そういうつもりじゃなかったんだけど・・・ごめんね。」京介の顔がまともに見れない。
。」京介があまりに優しい響きであたしの名前を呼ぶので驚いて京介の方を見ると、少し苦しそうな笑みを浮かべていた。「クリスマス、僕と居て楽しかったかい?」・・・そういえばこのクリスマスパーティーはあのときからの延長なんだ。あのときクリスマスを一緒に迎えていたら今日一緒に居れなかったかもしれないのか。「・・・あのとき一緒に居れなかったから今一緒に居れるんだとしたら、」「あたしは今、京介と居れてしあわせだよ。」むしろ今でよかった。と言うと京介は照れたように視線をはずして、クリスマスプレゼント。とそっけなく小さな箱をくれた。「あけるのは家帰ってからだよ。」と京介が言うと、京介はあたしの目をそっと手で覆った。京介の手が離れたらまたしばらく逢えなくなるのがどうしようもなく寂しかった。ついこの間までこんな感情なかったのに。





そっと京介の手が離れると見慣れたあたしの部屋。「とクリスマスを過ごせたのが一番のプレゼントだよ。」と京介はあたしの頬に唇を近づけた。どきどき、どきどき。
おやすみ、楽しかったよ。とあたしの頭を撫でて、京介は瞬間移動して消えた。
「・・・最近、ね。この間京介に山で助けてもらってから、おかしいの。」「きょうすけといっしょに居ちゃいけないって気持ちより、きょうすけとずっと一緒に居たいっていう気持ちのほうが大きいの。」静まり返った部屋にあたしの声と、京介からのクリスマスプレゼントのオルゴールが途切れ途切れに聞こえるだけだった。




(なんで今日に限って、)(あんなに可愛いこと言うんだ)
いつも以上にと居て自分のペースが崩されていくのが手に取るようにわかった。











めりーくりすます!ほら、たまにはあまくてもいいよね!←