学校の帰りにチルドレン以外のプレゼントを探そうと思って街に出ようと校門をくぐろうとしたら、「。」急に声をかけられた。聞いたことのある声。あたしが一番嫌いで、一番落ち着いてしまう声。声がする方を見れば銀色の髪をさらさらをなびかせている京介がそこに居た。
「今日は一体なんの用があるの?」と飛んできたモモンガを抱き寄せて京介に言った。すると京介は唐突に「もうじきクリスマスだね。」と言った。それでなに、と言おうとしたら京介が続けて「・・・ツリーの飾りつけを手伝ってはくれないかい?」なんて言って来た。
・・・は?いや、よく話が見えない。ポカンと口をあけてしまったあたしに京介は「話は後だ。おいで、。」と腕を引っ張った。もちろんこの会話は校門前で行われているわけで、すごく目立っていた。今日の夜メールとか来てたらどうしよう。特にこの間クリスマスの予定を話してた仲のよいお友達に見られていた場合は特に。あれ?予定ないんでしょ、みたいなこと言われたらごまかす術がない。

なんてごまかそう・・・なんてごまかそう・・・でも京介とぶっちゃけクリスマスすごすわけではないんだからごまかすとかそんなんじゃないはずなんだけれども。あのひと誰、って言われたときが一番困る。

うーん・・・悩んでいると悩みの種である京介がすこしあたしの方へ向いて「彼氏って言っておきなよ。」と笑った。「アンタ性格相変わらず悪い。」「ほめ言葉として受け取っておくよ。」・・・なにもいえない。
ぴゅーんとさっきまであたしの肩に乗っていた桃太郎は「モ相変ワラズ可哀相ダナ。」と言い残して京介の肩に乗ると京介に黙れげっ歯類って言われてテレポートさせられてた。ちょっと可哀相だけどちょっと馬鹿だな。

ひと気の少ないところまで行くと、京介は目を瞑って、とあたしに言った。言われた通り目を瞑る。あけていいよといわれて目をあけると其処には見たことのあるメンツと、一本のもみの木があった。
ねえ!」と澪があたしに駆け寄ってきた。久しぶりにみんなに逢うなあ。ちょっと昔が懐かしくなって、思わず澪を思いっきり抱きしめた。 そういえばなんでツリーの飾りつけを手伝わなきゃいけなかったかを京介に聞いてなかったことを思い出して、京介に問い詰めたら苦虫を潰したような表情で何も言わない。一体どういうことよ。 「少佐はね、とクリスマスツリーを飾りたかったのよ。」と意外な人から返事が返ってきた。 「もみじさん・・・」「久しぶりね。元気だった?」澪が苦しそうだったので開放したあたしの側に来て頭を撫でてくれた。・・・なんか本当に、懐かしいな。あたしの横では紅葉さんに余計なことを言うなと京介がぼやいた。
「本当はいろいろお話したいけど、また後でね。」と紅葉さんが言うと澪のテレポートでみんな瞬間移動した。残されたのはあたしと京介だけ。
「・・・さっき紅葉が言った通りだ。ほら、飾るの手伝え。」と強引に飾りのサンタさんを差し出してきた京介はすこし照れ気味で、こっちまで照れる。
超能力で飾りつけようとした京介に「駄目。ひとつひとつ手でつけてよ。」ありがたみとかまごころとかないよ、それ。と言うと京介はすこしびっくりした顔をしたけれど、小さく笑ってそうだねと言いひとつ、ひとつもみの木の枝に飾りの紐をかけていった。

しばらく経って大分ツリーも華やかになったところで「。」ふと京介はあたしを呼んだ。なに、と答えると「あのときクリスマス一緒に過ごせなかったんだよな。」ツリーを見上げながら京介は呟いた。そういえばあたしが京介と離れたのはクリスマス前でツリーを飾ろうって言う話を一緒にしていたときだったっけ。・・・なんでそんなことを突然いい始めたんだろう。 そりゃ確かにクリスマスなんて一緒に今まで居てくれるひとがあのときのあたしには居なくて、京介と一緒にすごせるのがすごく楽しみだったけれども。
「もしかして・・・」「今更だ、って怒るかい?」ツリーを見ていた京介が今にも消えそうな笑みであたしに視線を向けた。そんなこと言うわけないのに。結局あのときはツリー飾りつけする約束だけして出来なかったんだっけ。
「てっぺんのお星さま、飾ってよ、」ほら、あたしには届かないから。と京介に渡すと京介はさっきのびっくりした顔の何倍も驚いてあたしを見た。覚えてたのかと言う京介に、何のことかしらととぼけるあたし。

(てっぺんのあの星はには届かないから僕が最後につけてあげるよ。)

そこまで大きいわけでもないツリーのてっぺんなんて今では届くのに、あたしは京介に渡した。京介は小さく微笑んでツリーのてっぺんにお星さまをつけた。これでいいかい?と言う京介に笑顔でうなずいた。・・・まさかそんなこと今でも気にしてるなんて。なんとも京介らしくない。でもそんな京介だからこそパンドラのみんなは京介についていくんだけれども。(そして多分、あたしも。)
だから嫌いになんてなれない。バベルと京介の間に挟まれてしまうのだけれども。
ふあ、とあくびが漏れた。眠いのかと尋ねる京介にあいまいな返事で答えた。昨日ナオミちゃんと長電話しすぎたかな・・・すると京介はまた目を瞑ってと言った。言われた通り目を瞑って、言われた通り目をあけるとあたしの部屋の寝室だった。
「紅葉たちもと久しぶりに話したいって言っていたんだけどね。今日はおやすみ。」と京介はあたしをベッドの端に座らせた。睡魔はどんどん襲ってくる。だけどひとこと言わなければならない。
きょうすけ。もしかしたらこれ、京介の催眠なのかも。どんどん本当に瞼が重たくなってきた。眠気と戦いながらギリギリに出た彼を呼ぶ声に振り向いた彼の腕を掴んで「ありがとう。」と言おうとすればベッドの端からずるりと落ちる感覚が襲った。京介にお礼、ちゃんと聞こえてたかなあ・・・瞼が完全に降りきってしまったの自分で感じてしまい、意識を手放してしまった。




ベッドから落ちかけたをあわてて支えると、催眠がきいたようで寝息が聞こえた。自然とこぼれる笑みに自分でもすこし過保護すぎるかもしれないと思った。「ありがとう。」彼女の眠る前に言ったその言葉がうれしくてしばらく口角があがったままになるのは目に見えていた。
俗に言うお姫様抱っこでを抱きかかえるとベッドにそっと降ろして静かに彼女の部屋から去った。
一緒に飾ったツリーの場所に戻ると真木や澪たちが先に戻ってきていた。「少佐!ねえは?」と澪が目を輝かせて聞いてきた。「は疲れて寝てしまったよ。」と言うと頬を膨らましたけれど「また24日に逢えるだろう?」と言うとまた瞳を輝かせた。
子供は正直で羨ましいと今ほど思ったことなんてなかった。多分24日を一番楽しみにしているのは他でもないこの僕だとわかっていたからだ。(バベルでのクリスマスパーティー?そんなもの関係ないね。)(ぼうやには渡さない。)