と3時間目と4時間目の間の休憩に購買部までお昼ごはんを探しに行く途中でソプラノの声に背後から名前を呼ばれた。振り返ると月子先輩と哉太先輩、錫也先輩が揃ってこちらに手を振って居られた。(相変わらずのつたない敬語である。)
夏休みも終わってそろそろ文化祭の時期。何をやるか、どんなことがしたいか、が飛び交うこの季節は嫌いじゃない。だが人間関係が厳かになりがちでこの頃から女子はギスギスしたりなどめんどくさいことが多いが、男子9割以上ともなるとまったくと言ってそういうのはない。女子校出身の私とにはとても新鮮というか、むしろ驚きに近かった。
いつもなら学食ですませているお昼ごはんも、今日は文化祭の話し合いが昼休みにあるので教室で何か食べれるものを探しに来たのである。(王道だけどもやきそばパンが欲しくて早めに購買部に向かっていた)

月子先輩たちも昼休みに話し合いがあるらしく今購買部に向かっていたらしい。錫也先輩が作ったお昼ごはんは既に寝坊してしまった哉太先輩と、朝ごはんをたべ損ねた月子先輩の胃の中に消えてしまったそうだ。
私と、そして月子先輩たちで購買部に向かっていると月子先輩を呼ぶ声がした。声の主が何処にいるかわからず立ち止まると少し離れた階段をたたたと足早に降りてきた男子生徒は月子先輩を見て「やっぱり先輩だ。」と笑っていた。女子ではよくあるぱっつん前髪だけれども、男子がぱっつん前髪なのは珍しいな、と思いながら彼(の前髪)を見ていると、後ろから背の高いブレザーを着て居ない男子がもう一人やってきた。その男子は月子先輩を見て、「書記なのだー。」と両手を振って階段を降りてきた。あ、この人確か入学式で生徒会長に名指しされてた人じゃないか。
月子先輩に向かってやってきた二人の男子生徒を無言で見つめていると、錫也先輩が「先にやってきた黒髪の彼が木ノ瀬くんで、弓道部。後からやってきた彼が天羽翼くん。彼は生徒会で会計をしているんだ。」どっちも月子の後輩なんだ。と説明してくれた。なるほど黄緑のネクタイだから同い年だとは思ったけど、月子先輩の顔の広さには毎回驚かされる。というより、部活も生徒会、係までも掛け持ちをしていてちゃんと全部こなしている先輩に驚かされる。手を抜くと言う事を月子先輩は知っていても出来ないタイプだろう。「本当に月子先輩はすごいですね。」と錫也先輩と哉太先輩に言うとようやく蚊帳の外に居た私たち四人に木ノ瀬くん?が気づき、錫也先輩と哉太先輩に会釈した。「君たちが噂の星詠み科の女子?」月子先輩と喋っているときとは違う少し威圧感のある言い方に少し眉を寄せるも、肯定する言葉を返し、自分の名前との名前を告げる。
「ふーん。僕は宇宙科の木ノ瀬梓、こっちは天羽翼。」「ぬはは、梓と俺は従兄弟なのだ。」よろしく、と名指しされてた方の天羽くんは握手を求める手を伸ばした。私がその手に触れるか触れないかで彼は手をひょい、と引っ込めて私とと木ノ瀬くんの顔を順番に見つめる。(拒絶したわけじゃないだろうけど手を引っ込められるのは気分が悪い。)天羽くんはマイペースなんだな、と脳内にインプットしておこう。




「ぬはは、梓とはおそろいぱっつんなのだ。」

悪意の見れない笑顔を見て、私はデジャヴを感じた。
当の天羽くんは「ぱっつんトリオ!ぱっつんトリオ!」と楽しそうに何度も口に出していた。
ぱっつんが一人増えてコンビからトリオになって、天羽くんのマイペースさにその場に居た私たちや木ノ瀬君、月子先輩たちが呆気をとられていると、休憩時間終了のチャイムは無情にも購買部にたどり着く手前で鳴り響いた。