ただいま若者に人気の若手女優ちゃん。プライベートはあまり公開されていないミステリアスさとは裏腹に彼女の性格は常に明るい花ざかりの少女そのもので、なんと言ってもあたしの憧れの存在なのである。
(いまどきのアイドルはわからなくてもテレビとかはあたしだって見てるんだからね!)

今日も放課後レイちゃんたちとクラウンでおしゃべりをしていたところ、美奈子ちゃんが遅れて勢いよくクラウン(の自動ドア)をくぐりぬけてくると、今までレイちゃんに散々「アレ」というものについて責められていたのに、更に迫力満点になって美奈子ちゃんとレイちゃんは「ア・レ・!」と大きく叫んだ。(うーん、美奈子ちゃんが言ってるアレとレイちゃんが言ってるアレって違うもんなんじゃ・・・)

落ち着いていないまま美奈子ちゃんに連れられてやってきたのはいつもは人が全然居ないはずの公園の広場で。何があるんだと聞いているまこちゃんたちに対して美奈子ちゃんが「スリーライツの撮影やってるのよ!」と美奈子ちゃんが言うと、「ホームズ少年のZファイル!?」「嘘!あたしあれ大好き!」などみんなそれぞれの返答を返しているなか、あたしも「なにそれ。」とつぶやくと、横に居た亜美ちゃんが「平均視聴率35%の人気ドラマよ。」と、視線をロケ現場にやりながら心此処にあらずと言った感じで言った。(その後正気に戻った亜美ちゃんが「別に詳しいわけじゃないから!」と訂正していたものの、どう考えてもすりーらいつ?の隠れファンなんだと思う。)(あの亜美ちゃんですらハマってしまうなんて、どんなアイドルなんだか)
”くろやまのひとだかり”というのはまさにこのことであって、ジャンプしながら必死に現場を見ようとするけれどたまに視界が開いたときにしか見えないのに埒が明かない!と美奈子ちゃんが叫び、「行くわよ!」と5人みんな前に進み始め・・・たつもりがなぜかあたしだけ前に進めず、あきらめることにした。

ルナと一緒に歩いていると関係者以外立ち入り禁止の文字にあたしは心を躍らせて先に進もうとすると、何処からか聞こえた声に遮られた。
声がしたと思ったほうを見ればベンチにむくりと影ができる。黒髪で、サングラスをかけたそいつとしばらく言い合いをしていると、そいつはあっさりと関係者以外立ち入り禁止の方に去っていった。(俺のこと知らないの、とか知ってるわけないでしょ!)(それに自分から関係者なんていうヤツほど怪しいものなんてないじゃない!)

さっきのヤツの態度を思い出すだけで少しイラッと来たあたしは、ルナの制止を聞かずに関係者以外立ち入り禁止の方向に足を進めていると、悲鳴が聞こえた。あたしの出番ね!
その後の展開と来たら新しい敵に新しいセーラー戦士。・・・それに、あたしの新しい力。

説明することが多すぎて、スリーライツの撮影が終わるまでずっと現場を見ているだろう美奈子ちゃんたちを待ってる間、さっきの出来事を頭で整理しようとしてベンチで一人(と、一匹)でうなっていると、ふいにあたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。「あれ、でも美奈子ちゃんたちの声じゃない。」と振り返ってみるとサングラスをかけたいかにも芸能人ですと言わんばかりのオーラを持っている人が居た。その人はあちゃー、とでも言うような表情をして(こういうときってバツが悪いって言うんだっけ?)しばらく頭を抱えていたけれど、ああもう!と開き直ったような声の後、「あたしだよ、あたし。」と言ってサングラスをはずすと、そのあからさまな芸能人オーラを出したひとはあたしが大好きなちゃんだった。

(・・・でもあたし、ちゃんと知り合いじゃないのになんで向こうはあたしのこと知ってるの?)さっきまでのテンパっている様子とは一転、ふいに浮かんだ疑問にあたしは首をかしげる。するとちゃんは持っていた鞄からめがねケースを出してめがねをかけ、手で髪の毛をツインテールの様に分けつろ、見たことのある顔と重なった。
「ああああああああ!!お、同じクラスのちゃん・・・!」と叫ぶとちゃんはあんまり大きい声出さないでね、とにがわらいをした。

同じクラスのちゃんとは、美奈子ちゃんの席の後ろの子で美奈子ちゃんがバレー部に仮入部しに行った時に怪我をさせてしまったのがきっかけで話したのが最初で、結局バレー部には入らずに帰宅部になった病弱であまり学校に来ていないけれど、学校に来てるときはよく同じクラスのまこちゃんや美奈子ちゃんたちと一緒になってお話をしている高校に入って初めてできたお友達なのだ。
前にクラウンで話してた時に女優のと名前一緒なんて最初びっくりしたよ、と美奈子ちゃんが言った時は軽く「あはー。それ中学でも言われたよー。」とほわんとした独特の雰囲気で答えていた(もしやあれも演技!?)けれど、どうも話を聞いているとさっきは最近仕事が忙しくて学校に行けなかったからあたしに会えてつい話しかけてしまったんだとか。(照れるじゃなーい!)(うさぎちゃんのそういうところすんごくすき。)
「えへー。でもうさぎちゃんにこんなところで会えるなんてうれしいなあ!」とベンチに座ったちゃんは女優であたしの憧れのちゃんで、でもやっぱり学校でいつも話してたちゃんだった。

しばらくしてレイちゃんたちがあたしとちゃんに気づくまで二人で最近どう?って話をずっとしていた。(大騒ぎするアイドル志望の美奈子ちゃんと、静かにびっくりするレイちゃん、亜美ちゃん、まこちゃんの温度差は随分なものだった!)(また近々学校であおうね!)





弱ガールの秘め事