皆本さんと賢木先生に呼び出されて皆本さんとチルドレンのおうちに行くことになった。 チャイムを鳴らしてエレベーターホールを通り抜ける。
エレベーターを降りると見慣れた一枚の扉にたどり着く。
インターフォンを押せばすぐに扉が開いて、薫ちゃんに腕を引っ張られて部屋の中に入る。

突然腰の辺りに衝撃が来たと思えば、ぎゅ、と私の腰から離れない黒い物体。
その黒は髪の毛であると理解し、「だあれ?」と声をかける。
ゆっくりとそれまで見えていたつむじが動いて見えたのは今にも泣きそうな表情をする、子供だった。
「しょ、少佐?」
黒髪で、幼いけれども面影はあった。しばらく逢えていない大好きな、少佐。
今はバベルの皆さんと行動することが多くなったけれども、たまに心配して連絡してくれる優しい保護者。

話を聞けば少佐の記憶の一部が、黒い幽霊の娘から切りはなれていた人格・フェザーにはいってこの少佐が居るらしい。このことを知っているのはチルドレンや皆本さん達バベルの一部と真木さんと紅葉姉、葉っぱの三人だけで、隠密に話を進めていこうとしていたら最近フェザーが寝ているとうなされてうわ言のように私の名前を呼んでいるらしく、私が召喚されたらしい。
はっきり言ってフェザーがなんで私の名前を呼んでいるのかも、よくわからないし、少佐が今この空間に居ないことが知らされて居なかったことも実感が沸かない。
実感出来ることと言えば今フェザーが私の腰にしがみついている感触だけ。

フェザーの腕をそっと離し、しゃがんで同じ目線で向かい合う。
「しょ…京介くん?」俯いていた瞳がこちらに向けば目尻にたまった涙がキラリと光った。
その涙を人差し指で拭うと「はじめまして、です。」「私のこと、覚えててくれててありがとう。」
ぽんぽん、と頭を撫でればフェザーもとい京介くんは泣き出し、私の首に腕を回して抱きついた。

京介くんが泣き止むまで頭を撫でているとしばらくして撫でていた腕を誰かに掴まれた。
「このロリコンジジイ、そろそろちゃんから離れてもらおうか…?」
泣き止んでいた京介くんがまたしても涙ぐんで私にしがみつく。
「さ、賢木先生!京介くんはまだ子供なんですから…」「そうやって甘やかすからあのロリコンジジイになっちまうんだよ!梓も少しは危機感を持て!!」
で、でもフェザーは少佐じゃないんだし、京介くんは少佐ではないんじゃ…?

ついていかない頭でぼーっと私から引き剥がした京介くんに怒っている賢木先生を見ていると、
「なんやー、賢木センセイやっぱりちゃんのこと好きやったんやー?」
「男の嫉妬は醜いわよ?センセイ?」
「センセーよりアタシの方がいいよね?ちゃん!!」
次はチルドレンが私に抱きついてきた。「え、どういう…?」 「お前ら!くんが困っているだろう!」「なんだよ皆本!お前も羨ましいだけだろ!!」

わけがわからない私に私の両脇をがっちりとホールドしていた葵ちゃんと紫穂ちゃんが「要はみんなちゃんが好きってことよ!」と教えてくれた。
結局何がどういうことなのかさっぱりだったうえに、なんで呼び出されていたかもその頃になるとすっかり忘れていた。


ある晴れた春の日の休息、