DIARY//SS

「マツバさーん!」
『随分と楽しそうだね』
「イッシュ地方ってすごいですね!本当にポケモン知らないのばっかり・・・!
で、ですね!新米トレーナーさんと出会いました!!」

ほら、チェレンくん!といいながら彼女は僕の腕を引っ張る。
モニターにはこの地方からは遠く離れたジョウトのジムリーダーが映っている(本当に知り合いだったんだ)と思ったのは心の中に秘めておく。

「チェレンくんです!ポケモンについて詳しいんですよー!!
後幼馴染ちゃんが2人居たんですけど、それぞれ行っちゃったからチェレンくんだけ捕まえてみました!」

このひとは本当に謎だ。僕より年齢は上なのにいつも子供じみている。なのにたまに見せる年齢相応の表情に思わず胸が高鳴る。ポケモン勝負のときの目のぎらつきはなんとも妖艶で、話によるとジョウトやカントーではちょっとした有名人らしい。本人が少し前に「四天王さんとは昔戦ったよー」と何事でもないように言っていたけどもちろん定かではない(でもこの勢いだと本当なんだろうな)
であったばっかりなのにもっともっと知りたい。きっとそう思ってるのは僕だけで、どうせ僕は弟のようにしか見られていないけど。
目の前のモニターに一生懸命話しかけている様子をちらりと見て、小さくため息をつく。

ちょうどジョーイさんの声がした。彼女の預けていたポケモンの回復を知らせていた。
ちょっと待っててくださいとモニター越しの彼に言うと僕を置いて彼女はポケモンたちを取りに小走りでジョーイさんの元に行った。
気まずい空気が流れる中、マツバさんが口を開いた。

『一緒に居るのはいいけど、譲らないからね。』
(それは僕も同じです。)


(ポケットモンスター/マツバ・チェレン)



うっかりチャンピオンロードまで気づけば進んでいた私は四天王の待つポケモンリーグの3つの扉を制しました!(本当に、どいつもこいつもかいふくのくすり使いすぎて私涙目)げんきのかけらもあと少しだわ・・・
四天王の待ち構えている扉の向こうは誰がいるかわからないのだけれども、あと一人となれば誰が居るかなんて考えなくてもわかる。

(私あくタイプとは相性最悪なんだよなあ・・・)

なんせ手持ちにゴーストとエスパーが居るんだよなあ。でもこのひとを倒さないといつまでも帰れないしな、と重い足取りで扉を開けると一般人の私には今後関わることもないだろうなんとも豪華なお部屋が広がっていた。
なんとも豪勢でため息が出るほど大きなシャンデリア、見事な艶やかなツヤを見せている別珍のカーテン長い螺旋状のエレベーターのような乗り物。そして目の前に座っているこの部屋の主。
この部屋の主であるあくタイプの使い手であるギーマさんはギャンブラーでイケメンでフェミニストで何から何まで完璧な男だとよく噂を聞く。 ああ、確かにイケメンで女受けがよさそうなひと。もちろん生でみたのは初めてだし、顔も友達はよくカッコいいと騒いでたけど興味なかったので見たこともなかった。(ああう、このひと。)

「あくタイプとは相性悪いんですよね。」
玉座とも呼べる彼が座っている椅子にコツリ、コツリ、と靴音を立てながら一歩ずつ近づく。
ニコリと笑いながらも欠点をあえて自分から言う私を見て四天王のギーマさんは椅子の肘置きに肘をつきながら驚いたような表情を一瞬みせたが、すぐに肘をおろしてクスリと笑った。
「でもね、ギーマさん。」

「私、いかにもプライドが高そうなひとの苦痛そうな表情が大好きなんです。」「だからうっかり私はゲンガー一匹で戦いますね。」

さっきより笑顔になる私をみてギーマさんから笑顔が消えた。別に私はヤンデレの気質があるわけでもなんでもないし、ただひとの苦痛そうな表情が大好きで、特にプライドの高いひとをへし折るのが大好きなだけ。
ただイッシュで一番苦労したのはアーティさん。あのひとは腹の中なに考えてるかわかんないから怖い。本当にあのときだけは負けるかと思った。 「キミ、性格悪いってよく言われないかい?」ぎらりと光る私の目を見たギーマさんは笑みを浮かべてボールを構える。
「Sっ気が強い、とはよく言われます。」ニヤリを笑いながらゲンガーが入ったボールを構える私、数十分後にはゲンガー一匹でギーマさんにうっかり勝利してしまうのである。

(すみません、私はジョウト出身で旅するのが趣味な普通の一般人です。)(うっかりカントーもホウエンもシンオウも制覇した女ですけどね)

後日ライモンシティで偶然遭遇したギーマさんは何故か私を気に入ったと言って追い掛け回してきた。なにこいつ、もしかしてマゾだったの?


(ポケットモンスター/ギーマ)



「立花先輩大変ですうううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!」
「何をそんなに慌てている。」
「文化祭の講演会に来ていただく予定だったプロ忍の方なんですが、
小松田さんが日にちを間違えて明後日って言っちゃったそうなんですうううううううううううううわああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!」
「講演会といえばお前の管轄で、小松田さんを仲介して連絡を取り合っていたはずだな。」
「・・・そうです私の管轄ですそして小松田さんを介さないと連絡ができなかったのに!昨日!突然!連絡先を!行方不明にしたといわれました・・・
やっと連絡がついたと思ったら日にち間違えて伝えてたそうなんですうううううううううううううううううううううううううううわあああああああああああああああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!」
「泣くな。」
「・・・だって、わたしのかんかつ、なんだから、わたしのせいじゃ、ない、です、か。」
「それは完全に小松田さんのせいだろう。それに連絡も小松田さんを仲介して行えと言われていたのだからミスして当然なのだが・・・」
「・・・ほーらやっぱり私のせいじゃないですか・・・小松田さんをアテにした私のせいじゃないですか・・・」
「話を最後まで聞け。しかしそれを提案したのは学園長だ。お前が責任を感じるものではない。そうなってしまったのだから仕方ない。次の策を考えるぞ。」
「ずびっ・・・あ゛り゛がどう゛ござい゛まず、だぢばなぜん゛ぱい゛!」
「・・・ほら、顔から出ているもの全て拭け。」


(忍たま乱太郎/立花仙蔵)



秦趙同盟が締結された。その後すぐに趙国宰相李牧とその兵を労い、同盟を祝う宴が行われた。
信殿とご一緒させてもらうはずが父上と軍長達に招かれ一人先に来てしまった。
キョロキョロと目を泳がせ、信殿を探していると入り口で席を探している二人を見つけ、そっと自席を離れようとした。
すると信殿は空いている席を見つけてドカッと坐ったのだが、そこは呂不韋丞相のお席であり、目の前はまさに李牧宰相が坐っていた。
あわや、と思い慌てて自席を立ったが、信殿と李牧宰相の話を火蓋にこちら側でも飛び火が散った。先ほども事を冒した録嗚未である。
彼を諌めた文官を投げ飛ばした録嗚未の腕を掴んで諌める。「やめなさい、お前が熱い人間で、殿を尊敬していたのはわかる。」「しかしお前が暴れることによって殿の価値を下げかねないと言う事を忘れるな。」
何か言いたそうに奥歯を鳴らしたが、これ以上何もしないだろうと判断し、信殿の方に目を向ける。
途中蒙武将軍が甕に入った酒を飲み干しきって退場するという飛び火もあったが、苦笑を零しながらも見て見ぬ振りをして足を進めた。

「信殿。」彼の肩を叩いて名を呼ぶと少しは落ち着いていた様子だった。「あちらで昌文君がお呼びです。席が空いているようですよ。」、と信殿に呼ばれた自分の名前に李牧の眉が動いたのも勿論見過ごさなかった。
「飛信隊の信に王騎軍副官の娘、ですか?」「ならばどちらからもああいう目付きで言われても仕方ありませんね。」フッと笑う李牧はまさに絵になる人物だった。しかしそれは知も武も兼ねそろえている彼にはあまりに出来すぎていて、私の眉間は少しばかり皺が寄った。


(キングダム/李牧)※つめこみネタの前設定



「慶舎さまー!」
「…」
「ええええまた無視ですか…!」

「…黙って着いて来れないのですか。」
「慶舎さまと一緒に居て黙ってるなんて出来ません!」

大好きです!!
と、私が言えば前にいらっしゃる慶舎さまからため息が聞こえた。

自称、趙に生まれて十数年。
男兄弟に混ざって育った私は旦那探しより修行を選んでしまった故に見事に婚期を逃した。
男勝りで婚期を逃したと宮仕えしている父がぼやいたことをきっかけにカイネ隊長や李牧さまのお慈悲で慶舎さまの側近に大抜擢され、日々慶舎さまのお側で活躍しております。
これでも軍事演習ではそこらへんの男には引けはとりません。

最初は無表情で怖いと思っていた慶舎さまも十年近く側に居るので多少のことは慶舎さまの雰囲気でわかるようになったし、李牧さまにも「二人は息が合いますね」とお言葉もいただいた。
もちろん、慶舎さまはその場で即否定していたけれど。慶舎さまが李牧さまに言葉を返すようなことは滅多に無いが、私のことはよく否定されている。気にしていないけど。

なんだかんだ言っても慶舎さまはただ将軍としてお強いだけには留まらない。
人望もあるから李牧さまも一目置いておられるし、兵も慶舎さまについていくのだ。
私のことをよく無碍に扱われるが男所帯の中で女一人であることを気に掛けて下さっているからであって、心の底から嫌われては居ないと思う。
変に女扱いされるより私の気が楽であるとわかっていらっしゃる。
顔にも口にも絶対に出されないけれども、慶舎さまのそういうお優しいところが好きだ、大好きだ。

「ははは、相変わらず仲がいいですね。」
「はい!」
「いつも元気は有り余っていますからね。」
「いつ何時に何が起きても慶舎さまは必ずお守りしなければいけないので!」

いつも高い気力を保ってます、と続けて言えば李牧さまは人の良い笑顔を私に向けてくださった。
慶舎さまはと言えばまたため息をつかれた。
慶舎さまとほぼ同時に李牧さまの隣にいらっしゃるカイネ隊長からも同じようにため息がこぼれていた。

邯鄲までの帰路はあと少し。
そろそろ慶舎さまに愛想をつかれそうなので私も静かに慶舎さまのお側を歩くことにします。


しばらくして慶舎さまに「黙って薄気味悪い笑みを浮かべないでください。気持ち悪いです。」と言われて慶舎さまにお話する許可が出るのである。(そんなお優しい慶舎さまが大好きです!)


(キングダム/慶舎)