DIARY//SS




/0127/

日に日にやつれていくお姫様。お姫様を見るたびにつらそうな表情を見せる王子様。
ねえ、セイジュ。あんたは何がしたいの?まるで自分で自分の首を絞めるかのような彼の心はきっとズタズタ。
まるで自ら魔女を買って出たようなセイジュ。最近笑っていない。セイジュはいつも笑っていて、だけど時々リアリズムなところがあって・・・冷たいときもあるけど優しいひとだって、ことはあたしだってよく知っている。
王子様はまだ、何も言わない。お姫様は魔女にされるがまま。

「レニ・・・」部屋をノックもせずに入るあたしにレニは一瞬顔をしかめたが、その後は何もなかったかのように読んでいた本を無言で閉じた。
どうした、と声をかけられるとあたしは今まで堪えていた何かが切れたかのごとく涙があふれてきた。
何も言わずに嗚咽を堪えて泣くあたしに、レニは驚いたのかあたしの側まで来てくれた。・・・誰にでも優しいね、きみたち兄弟は。

レニとセイジュとお姫様に昔なにがあったかはあたしは知らない。あたしもお姫様同様迷いの森から人間界に飛ばされてしまった浮浪の身だったところをレニに拾われたから。過去はまったく知らない。少なくとも今があればいいと思っていたから。
だけどある日お姫様がこの部屋の前に現れたとき、はじめてみるようなレニの表情に、あたしは今という時間だけではカバーしきれない何かがあることを知った。
そしてあたしではお姫様の代わりになんてなれないことも知った。レニはずっとお姫様のことが好きだったことは知っていた。いや、なんとなく一緒に居ることで気づいていた。
レニの目にはいつもお姫様しか見えていない。でもそれをレニは気づいていない。時折見せるレニの穏やかな表情も、お姫様にしかみせていない。
それに気づいたときに初めて気づいた。あたしはレニが好きだと言うことを。

止まらない嗚咽をなだめるかのようにレニはあたしの背中をさすってくれている。本当に心地がいい。
「れ、に・・・」もう一度名前を呼ぶとあたしの目線にあわせてくれたレニがそこに居た。お願い、お願い。
ぽろぽろとこぼれる涙と涙の間に、あたしはレニに言った。

「お願い、お姫様を助けてあげて・・・セイジュを、助けてあげて。」

あたしにはセイジュがそこまで自らの首を絞める理由がわからないけれども、レニならわかるのでしょう?
お姫様がやつれていくのを見て、レニは苦しいんでしょう? だから、もうそんな悪循環・・・レニが壊して・・・よ。セイジュにも、お姫様にも・・・あたしにもできないんだよ。

そしてどうか、お姫様と幸せになってください。

苦しいのがあたしひとりならば喜んでその身を差し出そう。みんなが幸せになれるのならば。
何も言わないレニに、乾きかけた涙まじりの笑顔で、背中を押した。どうかレニとセイジュ、お姫様がみんな幸せでありますように。

過去の惨劇がいつか三人の中で笑い話になってくれるよう、レニの部屋に取り残されたあたしは彼があけたままにした扉を見つめながら願った。


(Under The Moon/レニ)



/0215/
海で遊べることになったとヨーコちゃんに言われて無理矢理渡された水着・・・
正直腕を掴まれてなかったら今すぐ逃げ出して水着なんて絶対着ないだろう。
ちょっと腕に力を込めるとヨーコちゃんが睨んできた。ひい、怖い・・・!
岩陰でささっと着替えたヨーコちゃんと、初めて着る水着に戸惑いつつも着々と着ているニアちゃんと・・・
さっきから監視されつつ手がのっそりと動いているあたし。

相変わらずの色気のヨーコちゃんと(あんな体型になりたいわ!)
清楚な白色で守ってあげたくなっちゃうようなニアちゃんと(あたしが男ならナンパする!)

・・・地味なあたしですかそうですか。
じっと二人を見て、自分は二人の引き立て役だとはっきり自覚したあたしは水着の上から大きめのTシャツを着た。足は仕方なく見えてしまうけれどまあ気持ち程度楽にはなった、か、な。たぶん。
ヨーコちゃんに何で上からTシャツ着てるのよ、と怒られたけど絶対に脱がない・・・!
先に行ったヨーコちゃんとニアちゃんを追いかけて岩陰からそっと出て行くと既にニアちゃんとキタンさんたちが水遊びをしてた。
にやにやしてるキタンさんを見て、(信用してなかったんじゃないの・・・)と、ちょっとムカっときた。
そりゃ、ニアちゃんすっごい可愛いし、いい子だし・・・だけど、さ。

(あたしだってもっと自分に自信があったらすぐにキタンさんのところに駆けていくのに。)

まあ、ニアちゃんはそれを天然でしてるんだけどね。ある意味確信犯より怖いっていう。
あたしはヨーコちゃんとふたり、真夏の日差しをさえぎるパラソルの下で太陽みたいに輝いているニアちゃん(と、太陽みたいなキタンさん)を眺めた。

なんか若いね、とあたしが言うとヨーコちゃんにあんたも若いのよ、ってデコピンされた。
砂浜との距離がまるでキタンさんとの距離みたいでとてもとても遠く感じた。
しばらくしてヨーコちゃんは眺めるのに飽きたみたいで違うところみながらぼーっとして、あたしはまだキタンさんばっかり見ていた。すると自意識過剰かもしれないけど目があった、気がした。
(ただの自意識過剰かもしれないけど)あわてて目線をそらすと、キタンさんがあたしの名前を呼んでいる。
ヨーコちゃんに肘でつっつきながら呼ばれてるわよってにやにやされて、ヨーコちゃんをちょっとだけ睨んだ。(するとさらににやにやされた)一生懸命あたしの名前を呼んでくれるキタンさんの声で心臓がつぶれてしまいそうで、キタンさんの居る方を向けなくて体育座りみたいに小さくなってうつむいた。
どきどきが止まらないあたしに気づいてくれたのか、ヨーコちゃんはため息をついて、あたしの頭をなでてくれた(髪の毛ぐしゃぐしゃになったけど)

しばらくして、ヨーコちゃんは飲み物取ってくると言って砂浜を離れた。別にずっとヨーコちゃんとおはなししてるわけでもないのに、ヨーコちゃんが居ないだけですごく寂しいし、いろいろ考えてしまう。(キタンさんとかキタンさんとかキタンさんとか)
すると突然腕をぐいっと引っ張られて、無理矢理立ち上がったみたいになると、あたしの腕を引っ張らせたのは、まぎれもないキタンさんだった。
掴まれてる腕は、ひんやりしててところどころぬれていて、さっきまで海に入ってたのがわかる。・・・走って来てくれたのか、少し息が荒い。
「なんで名前呼んでんのに答えないんだよ。」黙り込むあたしのせいか、キタンさんの腕を掴んでいる力が強くなった。(キタンさんの腕から流れた海水があたしの腕にも流れて、どきっとした。)
はあ、とため息をついたキタンさんをさっきまでずっとうつむいていたあたしはあわてて見上げると、海水で濡れた髪の毛をあたしの腕を掴んでいる手とは反対の手でかきあげた。

ごめんなさい、というとキタンさんはすんなりと腕を離して・・・くれなかった。
にか、と笑顔になるとキタンさんは掴んだ腕を引っ張り、海の方向へと走った。

(Tシャツの下、見たいけど見せたくは・・・よな。)(へ?なんですか?)(・・・)



(天元突破グレンラガン/キタン)



/0308/

ああ、やだ。もう、やだ。

(愛しの)少佐のご命令でバベルに潜入捜査に出ているあたしは、このバベルという組織のアホさに絶望した。
あたしたちはこんなアホな組織に今までちょっかい出されていたのかと思うと馬鹿らしくなってしまう。

(やだやだやだやだああああはやく少佐にあ、い、た、い!)

本日二度目にため息をついて(ちなみに一回目は桐壺局長がまたチルドレンを甘やかしているのを柏木さんと皆本・・・さんが止めてたのを見て出た)曲がり角に近づくと、目線の先にひとの足。 下を向いていたあたしはいきなり視界に入った足に驚いて止まろうとするも気づくのが遅れてぶつかった。
ぎゃ、というあたしの声が無駄に天井の高い廊下に響いてよろけると、ぶつかった相手が手を差し伸べてくれた。ああ、さっき以上に生き恥さらすところだった。

ふ、と腕を見るといつも一緒に居る皆本とは違う褐色がかったうで。

やばい。一番苦手なひとなんだけども。

大丈夫か、上から降ってきた声に確信を感じて、コイツだけには借りを作りたくなかったな、と思った。
一呼吸ついて彼を見上げると予想通りの顔がそこにあった(苦手ってか嫌いっていうか・・・に、が、て)(やだやだもうやだパンドラに帰るうううう)

ばちっと一瞬だけあった目線はまた一瞬にしてあたしが顔をそらしたゆえに反れた。ぶつぶつと小声でお礼をいうと多分あたしがバベル内で一番苦手な彼・・・賢木先生はにへら、と笑うと掴んでいた腕を離してくれた。
なんかぶつかったことを謝ってくれていたけど正直どうでもいい。
会釈をして賢木先生の横を通り過ぎて廊下をまっすぐ歩いていると後ろから賢木先生とおんなのひとの声。
(またナンパしてる・・・だからやだ、あの人。)

つい立ち止まって後ろを振り向いて賢木先生をみると、胸の奥がもやもやしてる。たまに賢木先生を見てるとなるこのもやもやは何。
携帯がポケットで震えているのに気づいて(あ、少佐!)携帯をあけるともやもやなんてどこかに消えていった。



(絶対可憐チルドレン/賢木修二)
かみんぐすーん・・・あばば毎回更新遅くて申し訳ないですorz