DIARY//SS




/1226/

街中でふと後ろから「京介」と見知った声がしたので振り返ると其処には見知りきった彼女が居た。すこし視線をそらしたまま「い、今時間ある?」なんて可愛いことを言うので予定がなかったわけでもないのにあいている。と答えてしまった。あいてるよ、と言ったときに効果音でぱああとなりそうなぐらい彼女の表情が明るくなった。(なんというか澪ほどではないとは言え、ツンデレだよね。君も。)口が裂けても本人にはそんなこと言わないけれども。
時間が惜しいのか彼女は僕の腕を掴んですたすたと僕の前を歩いた。今日は随分と強引なんだねとか、傍から見たら恋人同士に見えるんじゃないなんて言ったら確実に拗ねるだろうな、と思いつつ黙って彼女について行くことにした。(せっかくちょっとご機嫌なのに自分から機嫌悪くさせるのもなんだしね)
連れてこられたのは彼女の部屋。パタン、と扉を閉めて一呼吸置くと彼女が「適当に座って。」と言ったのでリビングの冬仕様になったテーブル、もといこたつにもぞもぞと入った。それをみた彼女は「ジジくさいよ」と何気にツボに入ったのか肩がしばらく堪えられませんとでも言ってるかのごとく震えていた。(寒いんだから仕方ないじゃないか。)
ふふふ、といまだに笑う彼女がこたつの元へ来て手に持っていたカップを僕に差し出した。ありがとうと受け取るとココアがあまい匂いをはなっていた。「で、今日はどうしたんだい?」というと彼女は困ったように下を向いていたがしばらくして、「・・・クリスマス。」クリスマスにプレゼント、あげれなかったから。とそっと差し出してくれたラッピングされた細長い箱。そのことをまだ引きずっていたなんて、ちょっとやりすぎたかな。とはいえプレゼントを用意してくれたのは正直にうれしい。
「ありがとう。」素直な気持ちを彼女に伝えたらぼん、と真っ赤になってしまった。べ、べつにそんな喜んでもらうほどのものでもないからね、と照れたまま言う彼女がどうしようもなく可愛いと思った。

(帰り際に頬に唇を寄せた彼女の表情はなんとも切なかった)(これは自惚れてもいいのかい?)



(絶対可憐チルドレン/兵部京介)




/1228/

少佐が皆本くんをかばって撃たれてしまい、力の制御がきかなくなってどこか無人島に飛ばされてしまった。少佐はもちろん重体。なのに何もない。賢木さんと皆本くんが手術をしている。
あたしは来るなといわれた。多分ひどいからだろうな・・・少佐について居たい、と言っても弱弱しいけれどはっきりと断られてしまった・・・
いつから手術が始まったかなんて覚えてないけれど、結構な長い間島全体が静まっていた気がする。
少佐が心配すぎて寝れなくて、行くあてもなくてただぼーっと波打ち際を見ていた。真っ青なこの海は日本じゃ見られないぐらい透き通っていて、時々ヤドカリみたいなのも歩いていた。それについていっては、また別の生き物についていって・・・どれぐらいたったかはわからなかったけれど、気づけばもうお日様は完全に出ていた。
ふいに後ろから名前を呼ぶ声がして振り返ると少佐が居た。もう大丈夫なんですか、というと少佐はただニコ、と微笑んだだけだった。そしてあたしの隣に来て波が寄せては離れていくのを一緒に見ていた。「また、死ねなかった。」とぼそっと呟いた少佐の方を見るとすごく遠くを見ていた。(胸がズキズキする)(あたしがかけれる声なんてない。)
しばらくして皆本くんが少佐を探しに来た。皆本くんをかばったことや、エスパーには少佐が必要とか、自首しようとか、いろいろ話していたけど、途中で澪たちが迎えに来た。少佐はあたしに手をさし伸ばしてくれて澪たちのもとへと飛んだ。

(やばいなあ、皆本くんと少佐またフラグ立ってる)(わざわざ少佐を追いかけてこんなとこまで来るんだもんなあ・・・皆本くんノンケかと思ってたのに。)

後でお前話があると少佐に言われてたっぷり怒られるのはまたあとのはなし。

腐女子だからすきなひとであれフラグが立ったら素直に考えちゃうの。




(絶対可憐チルドレン/兵部京介)




/1229/

澪ちゃんから突然電話がかかってきて驚いて本気で頭が真っ白になった。あれ、あたし今日、今、何をしているんだろう。 電話がかかってくる数秒前まで友達と何も考えずに世間話をしながらウインドウショッピングの延長線でお店をぶらぶら見たりプリクラ撮ったりと普通の女の子としてそこに存在したはずなのに。

「少佐が皆本たちとテレポートで離れ離れになった」

どういう経緯でそうなったのかもよくわからないけれども、この間そういえば皆本さん?って女王の思い人と皆本さんのご友人が行方知らずになって、女王がそれを嘆いていて少佐がそれに心を痛めていらっしゃって・・・あたしもそんな少佐を見て心がズキズキして。
まさか、それで少佐は皆本さんを探しに行って離れ離れに?頭が混乱して白から混ぜすぎた紫とから緑が混ざったような黒になった。思わずその場に立ち尽くしてしまって友達にすごく心配させてしまった。
もう少し深く聞いてみると何処にテレポートしたかは大体わかったらしく、澪ちゃんや真木さんたちは今からそこに向かうらしい。あたしも行こうと思って場所を聞いた。
電話を切るとひどく心配してくれていた友達と目線がぶつかって「親戚が倒れたみたいで」なんて適当なことを行って解散してもらった(ごめんね、また埋め合わせは必ずするから!)最優先なのはいつでも少佐だから。

人が少ない路地に入るといつもつけている一見ネックレスに見えるリミッターを解除した。デザインは自分で考えて作ってもらえるようなところで作ってもらったのですごく気に入っているので飽きないためいつもつけていることができる。
リミッターを解除してすぐにその無人島に向かった。普段は自分がテレポーターであることがあまり気に入っていないけれども、今日だけはテレポーターでよかったと思う。

言われた位置と思われるところに着くと本当に映画に出てきそうな無人島で、波がゆらゆらとゆれている。しかし熱い。今の日本は真冬のため日本からそのままのカッコで着た自分は頭にはもこもこしたフェイクファーの帽子にマフラー、厚めのコート・・・信じられないほどの厚着である。とにかく少佐を探さなければ。そう思ってぱたぱたと足場の悪い砂浜を走ると目の前に皆本さん、とご友人が現れた。ひい、という声が出そうになったのを堪えるとよく見ればその後ろに少佐が居た。「しょうさ!」と声を出すと少佐はこちらを向いて驚いた顔をした。

「ごごごごごごごごご無事だったんですね!!!!!!!!」少佐の顔を見た途端涙が出てきそうになるのを奥歯をかみ締めて我慢して少佐にかけよると「心配かけてすまなかったね」といつもどおりの笑顔をくれた。澪ちゃんからの電話が来たときはどうなるかと思っていたけど、よかった。「それにしても、その格好。」「・・・へ、変ですか!?」まさか服装に指摘されるとは思わなかったのであせって聞くと「いや、いつもと雰囲気が違ってね。いつもより断然こっちのほうが似合っているよ。」と少佐は頭をぽんぽん、と撫でてくれた。勿体無いお言葉ありがとうございます、と少佐の目を見るのが少し恥ずかしかったのでうつむいて言うと、騒がしい声が聞こえた。声のする方向を見ると澪ちゃんたちが居た。

(いやぁ、びっくりしたね。思わず自分が変態だと認めそうになったよ。)(いやーん少佐!ア・タ・シは?)(・・・)



(絶対可憐チルドレン/兵部京介)




/0102/

ただ声が聞きたかった。大阪での初日、あたしは横浜に行ってないからとりあえず楽しみで仕方なかった。まさか席があんなに近いとはおもわんくて、同時に自分がこんな場所に居ていいのかと真剣におもった。博貴を待ってるひとはこんなに居るのに、あたしだけこんなところでよかったんやろうか。最後の博貴に泣かされすぎて化粧全部落ちたとか、いろいろおもったけどとりあえず終わって最初に声が聞きたかった。感想は、またゆっくり話したいな・・・

プルルルルルル


「もしもし」

「あ、博貴?」

「おん。」

「お疲れ様。」

「ありがとう。」

「・・・」

「・・・どうしたん?」

「・・・おかえり。」

「ありがとう。」

「ホンマに、おかえり。」

「・・・」

「続きはまた夜電話する。」

「・・・」

「ごめんな、急に電話して。おつかれさま、おかえり。」


プー、プー、プー、プー・・・

どうしようもなく逢いたかった。俺がこの舞台に帰ってこれたんは紛れもなくお前が居ったからやで。ありがとうって言いたいのはむしろ俺の方やんか。
次の公演にも来るのか聞きそびれた俺は夜かかってくる電話が今から楽しみすぎてしばらくにやけが止まらんかった。桐山とかに散々冷やかされたとかどうでもよくて。
またこの舞台に立てたことと、電話が楽しみで頭はそればっかりやった。もう一曲作れそうやな。歌詞浮かんできたわ。メモせな、メモ。

(かんじゃにえいと/うちひろき)




/0103/

「先生、内君がうるさいです。」「えー!自分だってうるさいやんか!」
・・・今日もギャーギャーうっさいなあ。前の席に居る男女に目線をやりながら連日出るため息は一体何回出たのかを数えてみたくなった。(数えるほどしかついてないため息やったら苦労してないわ。)
前の席の内とその横の女、は俗に言う幼馴染っていう奴で、今年もクラスが一緒になった。そんで俺から言わせてもらえば内とは確実に両思いや。(それに気づかないアホ二人なんも確かなんやけど。)特に内は本気でアホの子や。は自分の気持ちに気づいてるような行動を時々起こしおるけど、内はまったくや。
内は去年までの3年間、親の都合で東京に居った。俺とはいつか帰ってくるとは聞いていたけどいつ帰ってくるとまではわからんからちゅうぶらりんな気持ちやった。そのときには何で自分がこんなに寂しいんやろ、博貴が居らんのが嫌やねん、とかいろいろ俺に相談してきたわけで。そのときになんとなく自分の気持ちに気づいたようやった。やから去年内から連絡なんてさっぱりやったのに急に帰ってこれるようになったって連絡が入ってきた時はと内がひっつくチャンスやろと思ってた。(あん時のの喜び方は尋常じゃなかった。)

いざ帰ってきたら前と同じようにどんちゃん騒ぎするだけして、恋愛要素皆無なんが現状やけれども。・・・正直見てるこっちが複雑や。
そして腐れ縁は今年のはじめから暴走するかのごとく続いていき、昔よりもひどい。同じクラスなんは当たり前やったけどまさか3回連続で席替えで内の後ろになったことなんて今までなかった。もちろん3回連続は内の横で。毎日うっさいねん。同じクラスになった新学期から喧騒が絶えたことなんて内とが同時に風邪ひいて休んだときぐらいやった。(けどそのとき俺もひいてて早退してもうた)

はあ、と連日どころか今日ですら何回目かわからんようになってきたため息をつく。すると前から内が「亮ちゃんため息つかんといてー、幸せ逃げるやんー。」と絡み付いてきた。俺に抱きついたせいでから気持ち悪いと言われた内はまたと言い合い。
誰かこのうっさいのつまみ出してくれ、頼むから。(でも正直またこいつらと騒げるのは嬉しかったりする、けど絶対言うてやらん。)(あとじれったいからはやくひっつけ、うっとしい。)

(かんじゃにえいと/うちひろき)