DIARY//SS




/0804/

「今日は雰囲気が違うな。」
ラドウ様に話しかけられた(どきどきする!)

「き、きょうはリトル様がどうしてもこれを着ろとおっしゃったので・・・」
リトル様のお洋服ですが。
リトル様にしては少しシンプルなフリルがあまりないワンピース。
真っ黒で小さい悪魔の羽がついているのがまたかわいい!!(さすがにヘッドドレスはお断りさせてもらったけど…)

「で、小さい悪魔であるお前は俺にいたずらでもするのか?」
小さく笑ってラドウ様はあたしのほほに手を寄せた。
…そうか、今日ハロウィンだったんだ…
今日が10月31日だということに気づかないまま居た自分はなんのためにフランケンさんがお菓子をたくさん作っていたかようやく気づいた。
そしてラドウ様が言った言葉をようやく理解して、「と、とりっくおあとりーと」と小さくつぶやいた。


「俺はお前にいたずらされるために今日はお菓子なんて持ってないぞ。」

…これは…あたしは今日どうなるんだろう。
ラドウ様を見上げながらしばらく固まった。(ど、どうしようあたしなにすればいいんだ!)



(どっちかっていうといたずらするのは俺のほうか)



(プリンセスナイトメア/ラドウ=ドラクレア)












/0807/

ほら、お別れ。


したくないっていってもなってしまった。


「さ、よならなんて、したくない、よ。」



ただアイツはうっすらと笑ってごめんね、と言った。

偽りのやさしさなんていらないからあきらめるための材料をください。



「また、逢えたら、もう一度・・・」

小さく呟いたアイツは、ごめんやっぱりなんにもないと言ってその言葉を濁した。





(またもう一度逢えたら今度こそ世界で一番愛してると伝えるよ)

何年経っても覚えているよ。


千の偽りより唯一の愛




(仮面ライダー電王/ウラタロス)












/0808/

「・・・」

いまだに抜けきっている記憶。

それもかけらだけがなくなったような感覚。
時々思い出せなくなるこの感じ。


「ねえ、すーちゃん。」

「なんだ?」

「・・・あの、さ。その・・・んー・・・あたしってさ、葵さんのこと、どう思ってたのかな・・・?」

「・・・は?」

「いや、あのね、なんか、うん。なんか・・・わかんないけど。」


きっと記憶がなくなる前のあたしは、葵さんを意識してたんだろうな、って。


すーちゃんはただ何も言わずにあたしを見ていた。
なんでだかわかんないけど、葵さんのことだけ忘れるなんておかしいと思うし、きっと何かあったんだと思う。

記憶を失った原因になった階段から落とされたのもきーくんいわく、葵さんの取り巻きみたいなんだったらしいし・・・


「葵は、お前にとっての、生きがいだったんじゃないか・・・?」



すーちゃんはいつになく真剣な表情だった。
いつものしかめっ面でもなく、本当に、真実を述べているような。


(葵さんのことをちらっと考えるだけで胸が苦しいけど/記憶を取り戻したい。)



(花宵ロマネスク/宝生葵)












/0810/

「孔明から、逃げてきたのかい?」

岩陰から声がして、振り向いたら其処にはあたしが好きだったあの人の兄上が居た。
あたしはまた、崖の上で体育座りしながら星を見上げる。

ねえ、孔明。あなたの兄上は、どうしていつもそうやってあたしがつらいときに来るんだろう。


なんとなく、いつか魯粛が言ってたことがわかった気がする。
この兄弟は本当に似ていて、本当に似ていない。
(すがたかたちではなく、そのおくのおくが。)

「あんた達兄弟は、似てるようで、やっぱり似てない。」
いくら血の分けた兄弟だとは言え、他人にはかわりない。


立ち上がって瑾を見ると、彼はただあたしを抱きしめてくれた。



孔明から逃げてきたんじゃなくて、瑾のせいで追い出されてきたの、なんていえるはずもなく。
結局孔明に踊らされていただけだと気づくのは、もちろん安易だった。
いつもならくやしいはずだけど、今日だけは感謝しなきゃ。



(鋼鉄三国志/諸葛瑾子瑜)












/0811/

東京と言われるところに生まれ十数年(自称)。
酸性雨のせいでこの世界がおかしくなってから数年(実際)。
知らない男の子が急に地下に現れて数ヶ月(多分)。
その子が実は異世界の子で吸血鬼だと知って数週間(驚愕)。
その子と初めて話をして名前を本人から聞いて数日(今更)。

神威という名前の少年はあたしより少し年上に見えるが延命のためいくつかわからないといわれた。
ので、少年というのはあくまでぱっと見である。

その神威に双児のお兄さんが居た事を聞いて数時間(興味)。
そしてその神威に好きだと少女漫画のように言われて数分(唖然)。


分厚い生地のマントがバサリとなりながら翻る。
地下水の中にある片割れを寂しそうに見つめる神威は子供みたいだ。
神威はあたしに突然の告白をしたあと平然としてまたお兄さんのことを心配していて現在進行形。
「神威…」と小さく呟くと悲しそうな瞳をこちらに向けた。
早くなる鼓動と、苦しくなる息の理由をわかっていても、返事ができない。

だからあたしはただ神威を抱きしめた。

これがさっきの告白の答えだとは彼本人は知らなくていい。

「まるで、子供みたいだよ、神威…」「…」



(さっきの答えは、これか?)(えっ…あ、うん、そうとってくれてかまわないよ…)
神威に告白の答えがYESだと気づかれて数秒(瞬殺)。

シリアスムードはいっきに消えた…(いや、シリアス苦手だから構わないよ…ぐさっと来たけど…)


神威のお兄さんが目覚めるまでまだ時間がある。




(ツバサTOKYO REVELATIONS/神威)












/0813/

「ねえ、そんなに紫陽がにくいの?」
「ねえ、そんなに紫陽にコンプレックス抱いてるの?」
「…もう、優子さんは手に入ったでしょうに。」

理事長室はいつになく静かだ。


突然出てきたと思えば突然行方不明になる、自分より何もかもが勝っている兄に悩まされている葵。
ねえ、いつまでそんな風に悩んでいるの?

だけどどんだけ挑発しても葵は乗ってこない。
あたしは信用されてないらしい。いや、そういう風に持っていったのはあたしのはず。
胸が苦しいなんて小さな犠牲なんて、なんてことない。

「あおい。紫陽とちゃんと逢わせてあげよっか?」
所詮次男は長男には勝てないってとこ、あたしだってみたいなあ、あたしがそういうと、葵は立ち上がって胸倉を掴んできた。
葵が挑発につっかかってきたのは初めてで、内心びっくりしたけど、そんなそぶりを見せない。


「…いい加減にしろよ。」低い妖艶な声で彼ののどから出た言葉に息を呑む。

ねえ、珠美せんせや優子さんにはそんな声で誘ったの?
あたしはその言葉を心の中で問いかけた。


(いっそ憎んであたしを覚えていてくれるのならずっとずっと憎んで)


「…アンタなんて大嫌い。紫陽に、もう絶対近寄らないで。」
そんなこと言わなくてもこっちからお断りだという表情を見せて葵は胸倉を掴んでいた手を離した。


(どんだけあたしが葵をすきでもそれは届くことのない想いなのだから)

少し乱れた胸倉を整えてあたしは何も言わずに理事長室を去った。
いつまでこんなことしているんだろう、と時々思う。
…また電話だ。着信なんて見なくてもわかる非通知。またあたしは葵を地面に叩き落すことになる。


(花宵ロマネスク/宝生葵)












/0814/

いつも比べられてきた。

いつも劣っていた。

いつも勝っているのは自分の兄。


今回だけは、このことだけは自分のほうが勝って居たかった。
だけどアイツも結局兄貴といつも一緒に居て。
俺を見て笑ってるだけだった。

−所詮次男は長男には勝てないってとこ、あたしだってみたいなあ−


とっさに胸倉を掴んだのは良いが目の前にすると何もできない。
アイツの顔が泣きそうにゆがんでいたから。

何が苦しいのか、わからない。
胸倉を掴んだから痛いわけではないし、
俺を見て兄貴と俺を馬鹿にしてるくせに。


(その胸の苦しみからお前はいつ解放される?)

葵なんて大嫌いだよ、といつもと同じ台詞を吐いて消える後姿はいつも以上に儚い。



(花宵ロマネスク/宝生葵)